20年経ってトレンドがPCからスマホに変わった
遡ること西暦2000年前後、米Meadeの「ETXシリーズ」をはじめとする「自動導入(GoTo)望遠鏡」が一世を風靡しました。それから年月は流れ、2020年以降のスマートホンの劇的な進化と共に天体望遠鏡界隈にも大きな変革が訪れました。
「Smart Telescope(スマート望遠鏡)」という新しいジャンルの登場です。
各所の特徴は下図の通りです。従来のGoTo望遠鏡ではカメラや接眼レンズ(アイピース)などが交換可能だったものが、スマート望遠鏡ではオールインワンになったことが大きな特長です(一部機種は除く)。
20年前のRegiStaxからスマホアプリのリアルタイムスタックへ
かつて天体写真といえば、PC上で商用ソフト以外にフリーソフト「RegiStax」を駆使して何百枚もの画像を自動スタック(コンポジット合成)するのが定番でした。しかし現在では、Google Pixelの天体撮影モードのようにスマホのカメラアプリが自動でスタック処理(4分間:16秒×15〜16枚)を行ってくれます。PCで時間を掛けて行っていた画像処理が、今や手のひらの上で当たり前になった証です。
この技術の流れを汲み、スマートホンに近い組み込みシステムを搭載する「スマート望遠鏡」は、撮影しながらリアルタイムで星雲や銀河の画像を重ねてあぶり出していきます。眼視観望とはひと味違うゲーム感覚な体験が、夜空の下で手軽に楽しめるようになりました。
デジタル化の先にある、ひとつのノスタルジー
ただ、唯一少し寂しいと感じるのは、見るものすべてがスマホの画面越しになったことかもしれません。
かつて合焦ノブを回しアイピース(接眼レンズ)に眼を押し当て、思わず眼を細めながら『月ってこんなに眩しいのか…』と息をのんだものです。網膜に飛び込んでくる生々しい月光の衝撃は、デジタルパネルからは決して味わえない体験です。P.S. 開発様、アプリ上でHDRサポートしてくれませんか…
代表的なモデルを実際に比較してみよう
Seestar S50は口径50mm、焦点距離250mm(F5)です。スマート望遠鏡が短焦点なのは、次の理由が重なった結果です。
- 明るさを確保するため:口径が小さい鏡筒では、焦点距離を伸ばすとF値が大きくなり暗くなります。
- 広い視野が欲しいため:星雲・星団・銀河は大きな天体が多く、短焦点のほうが余裕をもって収まります。アンドロメダ銀河やオリオン大星雲が代表例です。
- 追尾・導入の失敗を減らすため:焦点距離が長いほど、わずかな追尾誤差や風の揺れが星像のブレとして目立ちます。
- 小型・軽量・低価格にするため:手軽さがスマート望遠鏡の売りです。
- 小型センサーとの相性:小さなセンサーでは、短焦点のほうが画角がちょうどよくなります。
一方で、月や惑星、小さな天体は小さくしか写りません。
| 項目 | DWARF 3 | DWARF mini | Seestar S50 Pro | Celestron Origin (Mark II) |
|---|
| 価格(税込目安) | ¥79,999 | ¥70,999 | ¥194,000〜213,400 | ¥880,000 |
| 重量 | 約1.35kg | 約840g | 約2.8kg | 約18.9kg |
| 望遠鏡タイプ | デュアルレンズ一体型 | デュアルレンズ一体型 | デュアルレンズ一体型(経緯台) | RASA光学系(据置型架台) |
| 望遠側口径 | ― | 30mm | 50mm | 152mm |
| 望遠側焦点距離 | 737mm相当(35mm換算) | 1,016mm相当(35mm換算) | 260mm(F5.2、35mm換算880mm相当) | 335mm |
| F値(望遠側) | ― | ― | F5.2 | F2.2 |
| 望遠側センサー | Sony IMX678 (Starvis2)、1/1.8型、830万画素 | Sony IMX662、1/2.8型、2.9μm、約200万画素(RAW) | 1/1.2型、2.9μmピクセル、4K対応 | Sony IMX678、8.3MP(3856×2180)、2.0μm、対角8.9mm |
| 広角側 | 1/2.8型、200万画素、45mm相当 | 搭載(フレーミング用) | 有効径3.4mm、6mm/F1.75、視野角63°、35mm相当 | なし |
| 視野角(望遠側) | 3° | ― | 2.8° | 1.32°×0.75° |
| 最大露光時間 | 60秒 | 90秒(赤道儀モード) | ― | ― |
| バッテリー | 実測平均約5.5時間 | 7,000mA | 10,000mA | LiFePO4 97.9Wh、6時間以上 |
| 赤道儀モード | ○ | ○ | ○ | ○(AI処理で回転補正) |
| 防塵防滴 | IP54 | ― | ― | ― |
| その他特徴 | 内蔵3種フィルター、モザイク撮影 | 世界最小級、360°自由回転 | レンズヒーター、日中880mm相当 | Raspberry Pi 4搭載、AI完全自動スタッキング |
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